
現在のタニヤ通りは、新型コロナウィルス(COVID-19)の規制で日本などからの観光客が入国してくることができないため、日本料理の店も本来の賑わいを失くしている。
休業する店がある一方で、日本人街の日本料理店として営業を頑張っている店の存在には勇気づけられる。現在でも「世界の山ちゃん」や「大阪王将」「リンガーハット」などの店が人気を集めているが、そうしたなかで最も歴史が浅い「北海道原始焼き」が健闘しているという。なぜ人気があるのか、様子を見に行ってみたのでご紹介したい。
北海道原始焼きとは
「北海道原始焼き」は日本でも北海道や鹿児島などにある北海道の食材を扱う居酒屋グループである。
タニヤエリアでは新規参入の店だが、バンコクの他のエリアでは長年、スクンビット26などで店舗を展開している。
「北海道原始焼き・シーロム店」への行き方は、シーロム通り側からタニヤ通りに入り、タニヤプラザの正面から伸びる路地「ソイヤダ」へ右折。「ソイヤダ」を直進して突き当りの左側にある。
2019年まで老舗の日本料理店「浪速」があった跡地にオープンした。
ランチタイムに行ったのだが、店の前にメニュー表が出ているのでちょっとみてみようと近づくと、すぐに店のなかからスタッフが出てきて「なかにも、メニューありますので。」と流ちょうな日本語で声をかけられた。
そのままスタッフのあとについて店に入る。中央正面にいきなり大きな炉端と厨房が見える配置。向かって右側に座敷席、左側にテーブル席がある。テーブル席と厨房の間には2階の個室への階段がある。
産地を押し出したメニュー
テーブルにつくと、スタッフがすかさずメニューを持ってくる。
居酒屋メニューとしては、
つまみが、枝豆、塩辛、冷奴、コーンバターが150B、自家製タコワサビ190B、あぶり明太子280Bほたるいか沖漬190Bなど。
特徴的なのは、素材の生産地を前面に打ち出していること。
じゃがいもは「北海道・真狩の金丸農園」を使っているとして、北海道の広大な農園の写真がメニューに載っている。使った料理として「じゃがバタ塩辛」180B、「大人のポテサラ」160Bなどがある。
牛肉メニューは北海道の富良野産ということで「ふらの和牛」1200B、「ふらの和牛炙り握り」300B、「ふらの和牛うに炙り丼」580Bなどがある。
ほかには北海道厚岸大澤水産の牡蠣99B、といったものもある。
こういった産地メニューを前面に押し出すスタイルは日本のこだわり系の飲食店でよくある手法だが、輸送が大変なのでタイでは珍しい。
オーダーした鯖定食が来た。250バーツほどするので、タニヤの他店は190~220バーツくらいで魚の定食は食べられるので高めだなと感じていたのだが、出てきた料理をみて納得した。
ご飯、味噌汁、サバの他、漬物、肉じゃが、煮物に、なんと刺身がついている。
刺身はさすがに鮮度はやや落ちるものの、肉じゃがや煮物は、「夜、居酒屋メニューでオーダーしたらこのくらいおいしいものが出てくるのだな。」と期待させるのに十分のものだった。
しかも食べ終わった後にはフルーツも出てきた。
なぜ「原始焼き」?
インパクトのあるネーミングの店名「原始焼き」とはいったいどういう意味なのだろうか?
これは、メニューにある炉端焼きが名前の由来だ。
このように「北海道原始焼き」には炉端が作ってあり、オーダーが入るとここで魚介などの食材を焼く。炉端で炭で食材を焼くと、表面は香ばしくこんがり焼け、でも素材の中はふっくらとしっとり、という遠赤外線効果がある。この焼き方のおかげで素材の旨みが堪能できるのだという。まるで、我々の祖先の原始人が猟で手に入れた新鮮な肉や魚を火であぶって食べるような、素朴だがダイナミックな料理なので、原始焼き、というのだそうだ。
スタッフの気配りも見事
料理を待つあいだにも、スタッフがこちらの様子をみていて、暇そうに見えたらすかさず日本語の雑誌を持っていてくれたり、お茶を入れてくれたり、扇風機の位置を調整してくれたりと、気配りが徹底していた。
料理を運んできたついでにさりげなく、テーブルの上の箸の袋などのごみを回収していくなど、動きにも無駄がない。
メニュー内容と味と合わせて、日本の人気飲食店にいるような隙のなさだった。
反対側に見える座敷席にもタイ人客がひっきりなしに入っていたのはうなずける。
店名:北海道原始焼き・シーロム店
営業時間 ランチ11:30~14:00、ディナー17:00~22:30(コロナ規制期間中。)