
タイでは旅客便の乗り入れ制限などで事実上の“鎖国政策”をとってきた結果、タイ国内での新型コロナウィルス(COVID-19)感染者は、ほぼ0に抑えることができている。タイの国内ではさまざまな会社や飲食店、ゴーゴーバーに至るまでが営業を再開し、市民生活はコロナ以前の状態にほぼ戻った。
その一方で、外国からの観光客がほぼいない状態が半年近く続き、以前は日本を含む外国人観光客でにぎわっていた観光スポットや夜の繁華街などは、客の数が激減。
観光大国であるタイは経済に深刻なダメージを受けている。
こうしたなかタイ政府は、外国人観光客と、国内のタイ人と長期滞在外国人用に、それぞれ新しい政策を打ち出した。2点のニュースについてお伝えしたい。
最大270日滞在可能「スペシャルツーリストビザ」の内容は?
タイ政府は、タイを訪れる観光客向けに2021年9月末までの期間限定で「スペシャルツーリストビザ」を導入することを決定した。
滞在期間は入国時から90日間で、その後、1回90日、計2回の滞在期間延長ができるため最大270日間の滞在が可能になる。申請料金は2000バーツだ。
「スペシャルツーリストビザ」の取得条件は、
・タイ入国時に指定ホテルなどで14日間の隔離を行いコロナに感染していないことが確認されること
・タイ滞在中のホテル・住居を証明すること。
・旅行保険の加入
・銀行口座に一定額の預金などが必要であること、である。
スタートは10月1日。グループごとに隔離検疫を行い、最初のグループが10月15日、次のグループが10月21日に隔離が終了して自由にタイの観光地へ行くことができるようになる。そして問題がないようであれば状況次第で、受け入れ人数の拡大と、11月半ばからは隔離期間を7日間に短縮する予定である。
たしかに、いくら観光客を受け入れるとはいっても、タイに着いてすぐ指定ホテルで14日間の隔離生活をしたあとでないと自由に外を観光できないのであれば、最低でも15日以上休みをとれる人でないと観光はできないので現実的ではなく、この制度を利用して観光客が大きく増えることにはならないだろう、という観測も多い。
でも、時間に関係ない、年金受給者がタイのリタイアメントビザを取得する前や、その他のタイへの移住を考えている人が現地の下見の期間として長期滞在したいケース、また、日本でアフィリエイトや株式投資、不動産家賃などで収入があるので生活費の安いタイで長期滞在したいという人であれば問題はないはずだ。
そうした層がタイへ行くことが増えるかもしれない。
11月と12月の4連休を設置して国内観光を促進
タイ国内にいるタイ人や長期滞在中の外国人に対する対策も打ちだしている。
これまで、タイ人による国内旅行の費用の一部負担などの対策をしてきたが、ここにきて、4連休を増やすという政策をスタートした。
既に、9月の上旬にコロナの外出規制中に重なったソンクラン(タイの正月)祝日をずらして、9月4日~7日を4連休にした。この期間は、タイ国内のプーケットやパタヤなどの観光地が、タイ人観光客やタイで駐在員として働くなどしている外国人長期滞在者でにぎわったという。
タイ政府のプラユット内閣はさらに2020年11月、12月に祝日を移動してまとめることで新たに4連休を設定して国内観光を促進する予定だ。
新たに設定された祝日によってできる4連休は、以下の通り。
2020年11月19日(木)~22日(日)
2020年12月10日(木)~13日(日)
この期間は、タイ国内に活気が戻りそうだ。

以上2つがタイ政府の対外的・内的な観光業への対策である。
コロナ騒動が起きる前、2019年にタイに入国した外国人は3980万人だった。これは前年比4.2%の増加であった。
タイのGDP(国内総生産)の中での観光業の割合は10%以上だったという。
飲食業やナイト産業などは直接的には含まれていないだろうから、観光の周辺産業も含めると実質はもっと大きな割合である。これが現在はほぼ0になっていることを考えれば、タイ経済の深刻な状況が理解できる。
これからのさらなる開放政策に注目したい。