
2020年10月、バンコクでは反政府デモが起きており、連日大規模な集会がバンコクの路上で行われている。バンコクの日本人繁華街であるタニヤ通りやパッポン通り近辺ではどのような状況であるか、影響について現地の様子をお伝えする。
今回のデモの背景
タイでは歴史上、大規模な反政府デモが起こることは少なくなかった。
2014年、当時のインラック首相の属するタクシン元首相派の政権に反発する勢力が大きな反政府デモを繰り広げた。この両派がにらみ合う状況を、社会の混乱を招くとしてプラユット陸軍司令官(当時)が軍事クーデターを起こして戒厳令を出し、首相となって軍政を開始。
その後、2019年に民政移管をするとして総選挙が行われたが、軍政派が有利な選挙ルールであったこともありプラユット首相の政権の続投が決まった。
そうした経緯への不満があることと、2020年3月からの新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大を抑えるための非常事態宣言などの規制により、感染者の増加を抑えることには成功したが、“鎖国状態”が続くことによって観光大国であるタイの経済は悪化。こうしたコロナ不況への対策が不十分であることへの不安も加わって、大学生などの若者らが中心に、プラユット政権の退陣などを求めて反政府デモが連日行われ、バンコクの街角を埋め尽くす群衆は1万人を超す規模になった。
10月16日夜にバンコクのサイアム・MBK前で行われた大規模な政治集会では参加者と警官隊とがついに衝突を開始、警官隊が放水車で催涙ガスや塗料入りの水を放水するなどして強制的に退去させる事態になった。これまでの間に数名の逮捕者も出ている。
タイ政府は15日に非常事態宣言を出して5人以上の集会や、国民の士気を低下させたりする恐れのあるニュースやオンラインメッセージの発信などを禁止した。
タニヤ通りへの影響は
日本のTVでも流れたニュース映像では、路上を埋め尽くすデモ参加者に警察の部隊が放水をする様子が映し出されていたが、日本人街であるタニヤ通りはどうなのであろうか。
10月16日(金)の夜は、タニヤ通りのカラオケ店や居酒屋・日本料理店はほとんどの店が通常通りの営業をしていた。ただ、21時頃になると、タニヤから2㎞ほどの距離であるバンコクの中心街サイアムエリアでデモ隊と警察の衝突があったこともあり、サイアム方向から引き上げてきた大学生などの若者たちが降りしきる雨に濡れながら歩いてくる様子が見られた。
10月17日(土)は、当局は地下鉄MRTと高架鉄道のBTSが集会が行われている時間帯の運航を取りやめてデモを迎え撃つことになった。タニヤ通りからの最寄り駅であるBTSサラデーン駅およびMRTシーロム駅は夕方からシャッターが下ろされて閉鎖された。
シーロム通りの交通については、特に交通規制は行われていないが土曜日ということもあり車通りは普段より若干少ない印象である。

17日はタニヤから遠い郊外へデモ隊が移動。
しかしデモ主催者は、参加者に直前に当初の予定場所とは違う三つの場所への集合を呼び掛け、あらかじめ道路を封鎖していた警察当局の裏をかくという戦法に出た。
これらの集会場所は、ウドムスックやウォンウェンヤイなどのバンコクの都心から離れた郊外だったこともあり、タニヤ通りのあるシーロムは昨日まで多かった人が少なくなった。

タニヤ通りのカラオケクラブやバー、居酒屋、近隣のパッポン通りのゴーゴーバーなどは、営業をしている店の数はこれまでとは、それほど変わらないが、バンコク在住日本人が多く住むエリアであるスクンビットエリアからタニヤへ向かうにはデモが行われる可能性が高かったサイアムなどの都心部を通ることもあり、人影は少なくなってしまっている。
これからタイの反政府運動と当局の規制がどのような方向へ向かうのかは未知数だが、騒ぎが拡大するようであればコロナ規制と合わせて経済への影響が心配である。