
タイでの大麻の使用をはじめ、売買春行為、未成年との性的行為、ギャンブル等の行為が、それぞれタイの法律ではどうなっていて、日本の法律が国外適用されるかどうかについてまとめる。
タイでは2022年6月9日以降、大麻の使用が解禁され合法化された。
バンコクの様々な場所やタニヤ通りでも、大麻の葉のマークの看板の店が見られるようになった。
法律は基本的にはその行為が行われた場所の国の法律が適用される。だから外国人でも大麻を使用することはタイでは合法だ。しかし日本の法律では行為によっては、いわゆる「国外犯処罰規定」という、国外での行為に対しても罪とする場合がある。日本帰国後に処罰の対象となる行為と、ならない行為がある。それぞれの法律の違いをまとめてみる。
※法律の条文を調査の上まとめていますが、司法や警察の公式見解ではなく、正確性や合法か違法かについての判断については一切責任を負いかねます。また、当サイトはこれらの行為を推奨する立場でもありません。
大麻についてのタイ法律と日本の法律の国外適用ルールとは
【タイの法律】
<合法>
・喫煙や成分服用(医療目的に限るという建前あり)
・所持。大麻の植物(大麻の葉、枝、茎、根、幹)、エキス(THC含有量0.2%以下)
・栽培(医療目的の場合。申請必要)
・販売(許可制)
・関連製品の製造と販売は許可制(食品や薬品の関連法遵守)
<違法事項>
・娯楽目的での吸引は違法。
・THC含有量が重量の2.5%を超える大麻抽出物や大麻の花と種子は規制対象。
・公共の場や事業所、その他禁止区域での大麻喫煙
・妊娠・授乳中の女性への販売や使用
・20歳未満への販売
【日本の関連法律】
<大麻取締法>
・大麻及びその製品の所持・譲受(購入を含む)、栽培等については違法。
【日本の法律の国外犯規定】
大麻取締法は、国外犯処罰規定が適用。
【解釈】
上記のとおり、タイでの大麻や関連商品の購入や喫煙、栽培などは、量や目的・場所によりタイ国内法では合法。ただし医療目的が原則で、娯楽目的の吸引は違法とされている。人前で使用すると賄賂やたかりの口実とされる可能性がある。もちろんタイで購入したものを日本へ持ちこむことは違法。
日本の大麻取締法は国外行為にも適用されるため、タイで購入・栽培等をすることは(タイ現地で合法でも)日本帰国後に発覚すると処罰対象になる。タイでの大麻体験をブログやSNSに書いたり動画を投稿するとそれが物証となり帰国後、日本の捜査当局にマークされる可能性が高い。
ただし、日本の大麻取締法では使用(喫煙)は2022年時点では違法とされていない。(野焼きで大麻草の煙を吸う可能性があるため)
だから、例えば“タイで飲食店やホテルの部屋にいたらタイの友人が隣で大麻を喫煙し、その煙を吸ってしまった”というケースではタイ・日本双方の法律に違反していないことになる。
※日本の法改正で「大麻使用罪」を作り喫煙も違法とするという法案が2023年の通常国会に提出予定。国外行為にも適用か。おそらく上記の“抜け穴”を考慮してのことと思われる。
※以上は大麻に関すること。ヤーバーと呼ばれる覚せい剤などその他の禁止薬物は従来通り違法。
タイの風俗店利用やバー・カラオケ連れ出しのタイの法律と日本の法律の適用ルールとは
【タイの法律】
<1996年売春禁止法>
・売買春は違法。
・売春婦は罰金刑、提供店の責任者や斡旋者は罰金と禁固刑
・買春者は罪に問われない。
【日本の関連法律】
<売春防止法や風営法>
・管理売春(売春の元締め行為)は違法
・単純売春は違法だが、売春した本人に罰則はない。
・買春も違法だが、買春した本人に罰則はない。
【日本の法律の国外犯規定】
売春防止法は国外犯処罰規定がない。
【解釈】
誤解されがちだが、タイでは日本同様、売買春は合法ではない。しかし当事者(売春した本人及び買春者には罰則はない。
カラオケやゴーゴーバーなどのペイバー後の行為は、店は関知せず、当事者間の自由恋愛という形で問題がなくなる。この法律を素直に解釈すれば店舗型(マッサージパーラーやアダルトマッサージ)の場合は、(店内で行為があるため)店の責任者は摘発の可能性があることになり、実際に摘発が時々ある。これは日本のソープランドの理屈と同じ。
「売春を目的として道路などの公共の場所で勧誘した者」は罰金刑(タイ1996年売春禁止法)である。いわゆる“立ちんぼ”は違法。タニヤのガイドはあくまでも飲食店への客引であるので違法ではない。タニヤ通りやパッポン通りは公道ではなく私有地の敷地部分が多いのでこれも有利に働いていると推測される。
相手が個人(パパ活や援助交際)の場合や、愛人に対してお小遣いをあげて関係を持つ場合も処罰されない。
いずれにせよ利用客は、タイ・日本の双方の法律で処罰対象となっていない。
ただし、日本の風俗街などで働きたいという娘に助言・紹介等すると違法行為の幇助となる。そもそも日本へ観光目的で入国したタイ人は就労すること自体が違法であり、就労許可がある場合も風俗業は含まれないので、捕まったタイ人が「○○さんの紹介で来た」と言えば、斡旋とみなされる。
未成年者との性的行為についてのタイと法律と日本の法律の適用ルールとは
【タイの法律】
<1996年売春禁止法>など
・15歳未満の者との性的行為は違法。
・18歳未満の者と金銭などを伴う性的行為は違法
・18歳未満の者を性的なサービス店などで従事させることは違法
【日本の関連法律】
<児童福祉法>
・児童(18歳未満)に淫行をさせる行為は違法
<児童買春・ポルノ禁止法>
・18歳未満の者を買春する行為は違法
・18歳未満の者の性的部分が強調された写真や記録などを製造・所持することは違法
<都道府県の淫行条例>
・18歳未満の者と性的行為をすることは違法
【日本の法律の国外犯規定】
児童福祉法と児童買春・ポルノ禁止法には国外犯処罰規定がある。
【解釈】
タイの飲み屋や風俗店、置屋などでのペイバーや、援助交際の相手に18歳未満の者が紛れていて性的行為をした場合は、タイの法律で処罰される。知らなかった場合はグレーゾーン。日本帰国後も発覚の場合は日本で処罰対象となる。
タイでは15歳以上の相手であれば、金銭などを伴わない性的行為をした場合(交際相手など)は処罰規定はない。金銭関係ではない真剣な交際の場合、買春ではないので国外犯処罰規定のある日本の児童買春禁止法にもあたらないと考えられる。淫行条例は国外行為には適用されない。これは国によって許可年齢が異なる国際結婚を想定してのことと思われるが、紛争が生じて親権者が告発するなどした場合はタイの別の法律や日本の児童福祉法等に抵触する可能性がある。
ギャンブルについてのタイの法律と日本の法律の適用ルールとは
【タイの法律】
タイでは公営ギャンブル(競馬、宝くじ)、許可を得た場合(ムエタイ、闘鶏、闘魚、闘虫、麻雀大会、祭りでのボートレースなど)以外のギャンブルは違法。
現時点でタイのオンライカジノで合法なものはない。
【日本の関連法律】
<刑法185条で規定された賭博罪>
・公営ギャンブル、パチンコ以外で賭博を行うことは違法。
・海外のオンラインカジノがその国で合法でも、日本国内で利用することは違法
【日本の法律の国外犯規定】
賭博罪は国外犯処罰規定の対象となっていない。
【解釈】
タイでは裏カジノもあるが違法。上記のように一部でムエタイや闘鶏などで許可をとっていて合法の場合があるが、日本人に区別がつきやすいとはいえない。違法な賭場と知らずに利用したあとに、密告などされたら逮捕の可能性がある。
だから、タイ人は合法であるカンボジアの国境地帯のカジノへ行く人もいる。日本の賭博罪に国外犯処罰規定はないので、タイなどでギャンブルをしても(仮に違法な賭場であっても)帰国後に日本では処罰されない。(ラスベガスやマカオ旅行と同じ理屈)
オンラインカジノを合法な国(タイは違法)で利用することも問題なく、日本帰国後も罪には問われないが、帰国後に日本からアクセスをして利用した場合は、日本の法律が適用され処罰対象となる。
タイと日本の法律の違いまとめ
以上が、大麻の使用、風俗店の利用やペイバー(買春行為)、未成年との性的行為、ギャンブルについてのタイの法律と、日本の法律が国外適用されるかどうかについてのまとめである。
上記は2022年12月現在の情報をもとにしており、今後タイならびに日本の法律が改正される可能性はある。
タイの法令に反した場合、日本人でもタイ当局に拘束・裁判後に罰金刑や懲役刑が執行される。また上記の事柄は、タイでは現場の警察官や司法関係者の判断が恣意的な傾向があるので、合法か違法か、あるいは“見逃す”かの判定には不確かな部分もあり、リスクのあるジャンルであることは理解して頂きたい。
上記の法解釈については一つの見解であり、合法か非合法かについての判断について当サイトは責任を一切負いかねます。