
タイでは3月26日に新型コロナ非常事態宣言が出て、4月2日からの22時から翌4時までの夜間外出禁止令が発令されている。タニヤ通りやパッポン通りはカラオケやゴーゴーバーが並ぶ夜の繁華街だが、これらの店は3月18日より営業が停止となっている。
規制は4月30日までとなっているが、5月1日以降は解除になるのだろうか。
解除になるとしたらどのような形で日常生活に戻るのだろうか?今回はその問題を考察したい。
はじめにバンコクの都心、日本人街タニヤ通りとパッポン通りの様子について状況をお伝えする。
まず、4月14日のバンコクシーロム・タニヤエリアの街の様子は以下の通りである。
4月14日(火)現在のタニヤ・パッポンエリアで営業している主な施設
日本人街のシーロム・タニヤ通りやパッポン通りで4月14日現在、営業が確認できた施設・店舗は以下の通りである。
<飲食店>(テイクアウトのみ)
大阪王将、エビスダイニング、すき家、金沢ゴールドカレー、牛野家(牛丼)、内田家(ラーメン)、らあめん亭、生そばあずま、酒の店(居酒屋)、吉龍糖(台湾タピオカ屋)
<小売店など>
セブンイレブン、ファミリーマート、Px薬局(緑の薬局)、good薬局(ラーメン内田家の隣)、タニヤスピリット(酒屋・両替商)
パッポン通りの方で開いていた店舗は以下の通りである。
<小売店など>
セブンイレブン(パッポン通り内)、フードランド(スーパーマーケット)
スラウォン通りで開いていた店舗
パッポン通りと交わるスラウォン通りについては、営業が確認できたのは以下の店舗。
<飲食店>(テイクアウトのみ)
しゃかりき432(居酒屋)、炭火焼肉432、スターバックス、バーガーキング
<小売店など>
セブンイレブン、ファミリーマート
5月1日以降規制は解除になるのか?
タイの観光収入への打撃
タイの観光スポーツ省は、2020年第1四半期(1~3月)の観光客の動向について発表を行った。
この1~3月に、タイを訪れた外国人の数は合計で約670万人だったことがわかった。これは前年度の同時期を約38%下回った数値である。
期間での観光収入は3350億バーツであった。これは、前年度の同時期を約40%下回っている。
観光収入のうち、中国からの観光客によるものは576億バーツ。これは前年度の同時期から63.7%減という収入額であった。新型コロナウイルスの感染拡大問題が原因であることは言うまでもない。
日本人観光客とビジネスパーソンが訪問する繁華街である、バンコク・シーロムのタニヤ通りの経済への影響はさらに甚大だ。
タニヤ通り沿いの全店舗のうち、60%以上がカラオケ・バー・スナックなどのいわゆる水商売の飲食店である。
これらの業態の店は既に2020年3月18日から全面休業が指示されていたため、タニヤ通りの観光収入の減少率は他業種の多いエリアよりも圧倒的に大きいことが予想される。
ドンムアン空港の工事が意味するもの
タイ政府も経済への影響を問題視している。
その一つの表れといえる出来事をとりあげたい。
スワンナプーム空港と同様にタイの空の玄関であるドンムアン空港は、新型コロナウイルスの感染拡大で、国際便の入国が停止され、空港を利用する航空機と乗客が激減しているためとして、この時期に、国際線ターミナルの内装工事がスタートした。
工事には総額1億2600万バーツが投入される予定で、内訳は、冷房装置整備に9900万バーツ、カーペット取り替えに1800万バーツ、照明LED化に900万バーツ、という工事になるそうだ。
タイには国営空港と民営空港があるが、国営空港を管理するのはタイ空港公社(AOT)である。民営化されているが運輸省が70%の株を所有している国有企業なので、国の機関に限りなく近いのが実態だ。
たしかにドンムアン空港は古い空港で、近年改装工事が続いていたが、今ここに対して大規模な工事予算が降りるというのは、つまり景気対策の公共事業という側面が強い。
タイでは規制が続く現在、「コロナ失業者700万人」と言われている。そうしたなか少しでも経済をまわしたい、というタイ政府の試みであるのだろう。
タイは規制解除にふみきるのか
新型コロナウィルスの感染拡大への対策である、現在の夜間外出禁止令と水商売を含む娯楽・商業施設の休業指示は4月30日までとなっている。
5月1日以降、規制は解除になるのか、延長されるのかについてだが、上記を踏まえるとタイ政府の考えとしては、可能であれば解除したいところだろう。
ただし、新型コロナウィルスはワクチンができるにはまだ時間を必要とするということは言われており、長期化の可能性は専門家らによって指摘されている。
従って、どの時期に解除となるにしても、制限を付けたうえで部分的な解除を段階を踏んで行っていく、というやり方を、タイ政府はとる可能性が高いだろう。
段階的には一般飲食店(居酒屋やレストランなど。)と商業施設(デパート)の再開、というところから様子をみるのではないか。
その際に、どのような形なら営業を認めるかについてだが、他国のケースが参考になるかもしれない。
香港は、現在は酒類提供の全面禁止など、規制が強まっているが、その前の段階では、レストラン、バー、喫茶店等の飲食店は、以下の規制を守れば営業することができていた。

・店は客の体温検査を行う。
・店は消毒液を提供する。
・席の使用は店の50%まで。
・テーブルの間は1.5メートル以上空ける。
・1テーブルの4名を超える利用は不可。
・客は食事中以外はマスクを着用。
実際、体温検査と消毒液については、現在タイでも行われていることである。
もしかすると、5月1日以降、制限が部分解除になったのち、タニヤ通りの飲食店で、テーブルが一つおきに使える状態で客が食事をしたり、食べ終わるとすぐにマスクをしたりするような光景が繰り広げられるかもしれない。