
タイでは3月26日に新型コロナ非常事態宣言が出て、4月2日からの22時から翌4時までの夜間外出禁止令が発令された。タニヤ通りやパッポン通りはカラオケやゴーゴーバーが並ぶ夜の繁華街だが、これらの店は3月18日より営業が停止となっている。もうすぐ営業を休止して1ヶ月が経過しようとしている。
こうした夜の店で働いていた女性たちは現在、どのような生活をしているのだろうか。
今回は、そのあたりの事情をきいてみた。
はじめにバンコクの都心、日本人街タニヤ通りとパッポン通りの様子について状況をお伝えしたい。
まず、4月9日のバンコクシーロム・タニヤエリアの街の様子は以下の通りである。
4月9日(木)現在のタニヤ・パッポンエリアで営業している主な施設
日本人街のシーロム・タニヤ通りやパッポン通りで4月9日現在、営業が確認できた施設・店舗は以下の通りである。
<飲食店>(テイクアウトのみ)
大阪王将、エビスダイニング、すき家、金沢ゴールドカレー、牛野家(牛丼)、内田家(ラーメン)、らあめん亭、生そばあずま、まとい茶屋(居酒屋)、酒の店(居酒屋)、吉龍糖(台湾タピオカ屋)、all mango(ジュース店)、Doi Luang(ジュース店)
<小売店など>
セブンイレブン、ファミリーマート、パープル薬局、good薬局(ラーメン内田家の隣)、タニヤスピリット(酒屋・両替商)
パッポン通りの方で開いていた店舗は以下の通りである。
<小売店など>
セブンイレブン(パッポン通り内)、フードランド(スーパーマーケット)
スラウォン通りで開いていた店舗
パッポン通りと交わるスラウォン通りについては、営業が確認できたのは以下の店舗。
<飲食店>(テイクアウトのみ)
しゃかりき432(居酒屋)、炭火焼肉432、スターバックス、バーガーキング
<小売店など>
セブンイレブン、ファミリーマート
カラオケ・ゴーゴーバー嬢は何をしているのか
街で働いていたタニヤのカラオケのホステスやパッポンのゴーゴーバー嬢達は、現在どうしているのだろうか。
田舎に帰って実家で家族と過ごしている嬢も少なくない。
実家が飲食店など商売をやっている場合は実家の仕事を手伝っている人もいる。
また、一部の店の関係者が、タイにまだ滞在している駐在員などの常連客に相談されて、個人的にデートに応じる嬢を紹介するケースはあるらしい。
では、田舎への道が封鎖されている等の事情でバンコクに残っている娘たちはどうしているのか。完全失業状態ともいえる彼女らの様子を聞いてみた。
イベントコンパニオンとかけもちしたが…
ノイさん(24歳・仮名)は、パッポン通りの有名ゴーゴーバーで働くゴーゴーガールである。
彼女の働くゴーゴーバーが閉鎖されたのは、3月18日だが、それより前の、店がまだ営業していた時点で「お客さん全然いなかった。」という。
パッポン通りのゴーゴーバーはもともとベトナム戦争の米兵用のレジャー施設として始まったという歴史もあるので、現在も欧米系の客が多い。このためタニヤ通りのカラオケの娘たちと異なり、日本語ができる娘は多くないのだが、ノイさんは少し日本語ができる。
このため、3月中は、店に入ってくるお客が日本人と思えば、積極的に近づいて日本語で話しかけお客をとろうとしていたが、圧倒的に数が減っていたためうまくいかなかったという。
そのためかけもちで仕事をしていた。
「店(ゴーゴー)が(夜中)2時に終わってから6時に起きて次の仕事行った。」
何の仕事をしているか訊くと「自動車のショールームやイベントのプリティー。」だという。

プリティーとはイベントコンパニオンのことである。ノイさんは「私は、日産のイベントに行くです。」とのことで、日本語はその関係で勉強を始めて少し話せるようになったのだそうだ。
こうしたモデルプロダクションに所属していて、ゴーゴーバーとかけもちで仕事をしているという若い女性は少なくない。でも通常は、ゴーゴーバーの仕事は深夜まで続き、ペイバーともなれば翌日のバンコク郊外でのイベントコンパニオンの仕事には間に合わないので、普通はそうたくさんシフトを入れるものではないのだそうだ。
しかし新型コロナウィルスのあおりでゴーゴーでも収入が激減したので、3月は可能なかぎり毎日イベントコンパニオンの仕事も入れるようにしていた。
「毎日ねむい。顔もおばあさんみたいになった。」と寝不足での過労で弱っていたという。
SNSで物を紹介するバイトを細々と
現在は、それもできなくなったノイさん。どうしているのか?
「(モデルの)会社が教えた、紹介する仕事。」
これはフェイスブックやLINEなどで、化粧品や香水、洋服などを紹介するという仕事だそうだ。
「いいね」の数の多さによって微々たるマージンがもらえるのだという。
「今、これする人多い。みんな店ないだから。」

ゴーゴーバーやカラオケで働いていた嬢たちは、現在店が休みで仕事がないので、こうしたSNS上のモデルなどをやる人が増えているらしい。そうはいっても、それでちゃんとした収入になるのは難しいようだ。
たしかに、言われてさがしてみると、カラオケやゴーゴー嬢かは定かではないが、露出の激しいモデルが商品を紹介しているものがいくらでも出てきた。普段とは違う人の動きができているのだろうか。
違法なものも含めてやらざるを得ない
タニヤのカラオケ店に在籍しているパムさん(27歳・仮名)の場合は、このような蒸気たばこの宣伝に手を貸していた。「香港のブローカーがやってる。」とのことで、モデルとして顔を出すのではなく、商品を前面に出して拡散をして、問い合わせがあれば自ら販売者を紹介するという手法らしい。
もちろん、タイではアイコス等を含めた加熱式たばこや蒸気たばこの喫煙は法律で禁止されている。宣伝・販売をするなどというのは、もってのほかだろう。
あぶなくないのか?ということを訊くと、
「仕事ないだから、しかたないでしょう。」と半分怒ったような見解だった。売れているのかきいてみたが「全然ダメ。お金がない。」 かなり苦しいようである。

一定の基準を満たした失業者には、タイ政府が1か月5000バーツの特別給付金を出している。
水商売の従事者がこれに該当できているのかはわからないが、バンコクの場合5000バーツでは家賃の足しにして終わりだろう。新型コロナウィルスの収束と繁華街の復活を望むのは、観光客以上に、街の人たちにとって切実な問題なのである。